和族遥かなる旅路Ⅱ

タイ族編 第12話 - 秦王朝

周の時代の胡族が、甘粛省の秦邑(天水)を賜り、馬の放牧を開始します。これが中国大陸における秦族の始まりです。その後渭水を占拠し、周王朝混乱の時期に黄河上流・長江上流を押さえます。

[イン]モーナの言った通りになったな。
[ヌン]悠長な事を言ってる場合じゃないよ。長江上流を押さえられたからには、中流の倭族の邑は勿論、下流のこの邑も侵略されるのは時間の問題だよ。

[イン]いや。俺たちは戦わんし、逃げもせん。戦場は、周王朝の領域の黄河が主だ。戦うのは国を自称している、秦・魏・韓・斉・越・燕・楚だ。何れも夏族や周族の姫姓を名乗っているけど、何処の遊牧民だかわかりゃしない。いずれ此処にもやって来るかも知れないが、戦うのは周の残党の楚で、俺たちじゃない。それに、実際の遊牧民族は人員的に少ないから、秦が勝っても楚が勝っても我々の邑が直接支配される事は無い。守りを固めて中立を押し通す。ヌンは、村民に伝えて安心させろ。モーナは、中流のヤー叔母さんに、同じ事を伝えてくれ。
[ヌン]分かった。
[モーナ]よし。

人々の顔が安堵の表情に変わりました。モーナはヤーの邑へ馬を飛ばします。ヤーのいる岐山(きさん)は、秦嶺山脈(しんれいさんみゃく)の麓にあり、棚田の稲が青々と何処までも続いています。黄河の中原に近いので、邑の防御壁は厚く高く頑丈に作ってありました。

[ヤー]よく来てくれましたねぇ。道中大変だったでしょう。ここの邑も、戦わず逃げずが大勢の意見なのですが、太公望の子孫たち周族は迷っていました。下流の邑の決定を聞き、気持ちが一致したようです。
[モーナ]それは良かったです。急いで馬を飛ばして来た甲斐がありました。では、私はこれで。

[ヤー]夜は危険です。何もお持て成しは出来ませんが、ゆっくりして行って下さい。
[モーナ]では、一晩だけご厄介になります。残してきた邑も気になりますから。

酒や食事が次々と運ばれて来て、人々も続々と集まって来ました。太公望の子孫たちも、すぐに意気投合しました。彼等は刺青はしていませんが、知識は高く、長江の邑の事もラオーの事も伝え聞いて知っていました。太公望の人望も、長江の邑を経由して、日本列島に伝わっています。

[ヤー]父や母は、如何お過ごしでしょうかね。
[モーナ]はい、やまとの淡山でお兄様と一緒に暮らしていると聞いています。これはラオーの教えを元に、長江の邑で作った漆塗りの椀です。お使いください。

[ヤー]何とまぁ、朱の美しいこと。料理が映えますね。私たちが生まれる前、父は母にいろいろな物を作ってくれたそうです。私たちが農耕で生きて来れたのも父と母のお陰なんです。
[モーナ]全くその通りです。なかなか、ラオーの域には到りません。それから、これは周の皇帝から頂いた翡翠の玉です。ヤー叔母様が持っているのが相応しいと、邑で相談しました。

[ヤー]私が?
[モーナ]はい、インの話では、やまとでラオーが作ったものだと。

ヤーは胸が熱くなりました。父と過ごしたのは長江の邑で、ほんの一時のこと。父の命令でこの邑に戻りました。ヤーには中国大陸の倭族を見守る役割があるのです。太公望の子孫たちも、ラオーや和族の話に興味深々で聞き入っています。


秦族は戦略が巧妙です。攻勢に出ては諸国を踏みにじり、劣勢に立つと和睦を結びます。戦国時代の中盤には遠交近攻策を採用して、一気に領土を拡張します。統一目前に迫った秦は、いよいよ楚に決戦を挑みます。

[イン]始まったな。幸い秦も楚も、武器を持たない我々の邑には無関心だ。
[ヌン]驚いたね。インの言う通りだった。

[イン]防御を徹底して静観しよう。モーナは、ワ族と高砂族を率いて、邑に近づく兵の首を片っ端から狩れ。誰がやったか判らないようにな。
[モーナ]待ってました!

インが公に首狩りを許したのは、これが初めてでした。秦は、楚・燕・斉を瞬く間に破り、秦王朝を開きます。中流のヤーの邑にも、この長江の邑にも、敗れた楚の残党が流れて来ました。太公望の親族縁者も沢山います。

始皇帝は、万里の長城を築いて北方の遊牧民族匈奴に備えます。更に、南海郡・桂林郡・象郡を置き南方支配を始めます。しかし、権力を笠に着た横暴な統治で人臣の不満は高まります。水銀の不老不死の薬を飲んでいた始皇帝は、国内巡視中に亡くなり、わずか三代17年で秦王朝は滅びます。

[イン]秦は、周族の法治主義と倭族の薬草文化を真似て暴走させちまったな。法治も薬草も人民の為にあるもので、自分の為にあるものじゃない。儒教弾圧や焚書坑儒に走ったのも、これまでの中国大陸の歴史を消そうとしたんだろな。そうしないと成り立たないなんて、何と哀れな民族なんだ。
[ヌン]・・・

Google Sponsored

コメント

このページに関する、ご感想やご質問をお寄せください。
お名前と都道府県名は、正確にお書きください。 - 泰山 -

お名前: *必須
都道府県: *必須
コメント: *必須

まだコメントは有りません。