和族遥かなる旅路Ⅱ

タイ族編 第5話 - 高砂族

高砂族の村は、和族の村に隣接した丘陵の中腹にあります。傾斜地に広がる棚田(たなだ)が、太陽の光を反射してきらきらと光っています。水車の無い時代の稲作は、土地の高低差を利用して田に水を引いていました。稲作が、長江中流域の急斜面で発展したのも頷けます。

[イン]お~い、モーナ。居るかぁ。
[モーナ]おう、あにーか。こんな朝早くから、何か用かい?
[イン]いや、久しぶりに一杯やろうと思ってな、ヌンも連れてきた。ほら酒。

モーナとは、Y-O1系高砂族の祖です。Y-O2系のタイ族とは遺伝子的に極めて近い民族で、浅黒く精悍な顔立ちをしていますが、人付き合いは苦手なようです。ただ、和族とは気が合うらしく、インのことを兄のように慕っています。

[イン]なんだ、刺青を彫っていたのか。もう体中が刺青だらけじゃないか。
[モーナ]あぁ、ここに隙間があったんで・・・。何言ってんだい。刺青を教えてくれたのは、あにーじゃないか。ヌンだって、ほら刺青だらけだぞ。

[イン]俺は強制した覚えは無いぞう。お前らがわし等を見て、勝手に始めたんだろうが。
[モーナ]・・・。
[ヌン]はははっ。

[イン]それに最近、山の向うから来る、商人の首を刈ってるそうじゃないか。
[モーナ]あれは、豊穣祭用だよ。ワ族だってやってるだろ。

[イン]ワ族がやるから何でも良いと思うな。ヌン、お前はやるなよ。
[ヌン]あぁ。
[モーナ]・・・。

[イン]今日はな、そんな事で来たんじゃないんだ。そろそろ稲が実をつける時期だけど、鳥害を思うと憂鬱でな。お前も知っているように、倭族にとって鳥は天の使いだから、無下に追い払うわけにも行かん。何かいい方法はないかと、二人で相談にやって来たわけだ。
[モーナ]それなら良い方法がある。ちょっと一緒に来てくれ。

モーナは、二人を外に連れ出すと、棚田の方へどんどん歩いていきます。

[イン]あいつ、歩くの早いなぁ。
[ヌン]うん。とても付いて行けないよ。

[モーナ]こっちこっち。これがそうだ。

そこには、竹を十字型に結び付けて、布切れを蛇のように巻き付けた人形が立っていました。訝(いぶか)しがる二人を他所に、モーナは続けます。

[モーナ]鳥居のしめ縄を見て思い付いたんだ。あれって蛇じゃんか。蛇は鳥の天敵だろ。鳥が怖がって近寄って来ないんだ。名前は、かか(蛇)しにした。

[イン]やぁ、これは名案だ。うん、たいしたもんだ。考えてみれば、鳥を泊まらせる鳥居に、蛇を巻きつかせること自体可笑しいよな。全く気が付かんかった。
[ヌン]あぁ。

山田の案山子(かかし)は、後日、稲作と共に日本列島にも伝わります。

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