和族遥かなる旅路Ⅱ

タイ族編 第4話 - 鳥居

二度目の豊穣祭を迎えようとしている頃、ヌンには、前々から不思議に思っている事が有りました。

[ヌン]イン、村の入り口に立っている鳥居は、何の為に有るんだい。鳥が止まるってのは解るんだけど・・・。

[イン]うん。話は長くなるけど、お爺ちゃんのそのまたお爺ちゃんから聞いた話では、倭族にとって鳥は天からの使いなんだそうだ。
[ヌン]天からの使い?

[イン]あぁ。昔、天と地が引き裂かれたとき、我々のご先祖様である地の神が、阿倭山の洞窟に閉じ込められてしまったんだ。その時、夫の天の神が使わした鳥が、何処からともなく飛んできて、洞窟に穴を開けてくれたそうだ。それで、地の神は外に出る事が出来たんだと。
[ヌン]ふうん。

ヌンは、昔小麦と娘のヤーがラオーを探して阿倭山の洞窟を出たという話を思い出しました。小麦はその後、ラオーと共に日本列島へ去って行きました。もしかして、小麦が地の神だったのでしょうか。

[イン]それにね。鳥は、春になると天から穀物を運んで来るんだよ。だから、何時でも鳥が村に立ち寄れるように、入り口に鳥居を立ててあるんだ。
[ヌン]なるほど。

[イン]俺たち倭族が、阿倭山にいる頃まではそうだったんだ。ところがな、長江中流で水田稲作が始まると、鳥居にしめ縄や篭目を飾って、今じゃすっかり魔除けになってしまった。蛇や龍は田の神・水の神だからな・・・。単なる魔除けだったら別に鳥居じゃなくてもいいし、鳥が泊まる必要も無いだろう。もう、鳥も要らなくなってしまったんだね。
[ヌン]・・・。


[ヌン]もう一つ、聞いていいかなぁ。鳥居に立て掛けてある、男と女のシンボルは何なんだい?何か卑猥で、見るに耐えられないんだけど・・・。

[イン]はははっ。あれは一口で言えば、豊穣祈願だね。考えてもみなよ。この村は地の神の子孫の村だ。穀物も、鳥が種を運んで来て始めて結実する。自然の営みじゃないか。人間だけが眉を潜めるって可笑しいだろ。もっと自然体に構えて良いんじゃないかい。
[ヌン]そうだねぇ。

[イン]それと、あのシンボルは、この村が母系社会である事を表しているんだ。
[ヌン]えっ?

[イン]地の神は、天の神と離れ離れになったのを嘆き悲しんだ。小麦叔母さんもラオーと離れ離れになったのを嘆き悲しんだ。会いたい、一緒に居たいという女の願いがあのシンボルなんだ。もし、この村が父系社会になったら、真っ先に片付けられてしまうと思うよ。男と女が別々に暮らしたら、世界は終わりなんだよ。天が無くなっても地が無くなっても、世界は終わる。
[ヌン]・・・。

[イン]あ、すまん。湿っぽい話になったな。
[ヌン]いや、良い話を聞かせてもらったよ。

ヌンは、4万年という民族の差を感じた。和族は、表面に惑わされること無く、決して根源を見失わない民族なのだ。

[イン]田んぼの鳥害の事だけどな、二人で考えていても思いつかん。高砂族の村に行ってみよう。何か良い知恵が浮かぶかも知れない。

二人は、和族の村を横切って、高砂族の村へ向かいました。

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