和族遥かなる旅路Ⅱ

タイ族編 第3話 - 水田稲作

稲科は単子葉類のツユクサ類に属し、比較的新しい部類の植物で、近縁に椰子目や生姜目があります。

最初の稲作は、長江上流域で始まり、焼畑に籾(もみ)を直播(じかま)きした陸稲(おかぼ)でした。水田による稲作は10,000年ほど前の長江中流域で始まったようです。ヌンたちが住む長江下流には、7,000年ほど前に中流域からきた小麦の娘ヤーの子孫が水田稲作を伝えます。

水田稲作は、水から養分を摂取するので、1,000年でも2,000年でも連作が利きます。これが他の農耕との決定的な違いでした。しかも、田んぼやその周辺では、稲の他にも魚・タニシ・瓜類・野菜がとれて商人要らずでした。

稲作の準備は、雨季が来る前に始まります。小川から田に少しずつ水を入れ、あぜ道に土を盛って高くして行きます。あぜ道の補修が済むと、水を張った田の土を水牛を使って耕します。この地方の風物詩です。

[ヌン]はい~、はい!
[イン]いやはや、大したもんだね。まるで水牛の気持ちが解っているみたい。

[ヌン]いつも寝起きを共にしてるからねぇ。呼ぶとあの図体で走って来るんだぜ。
[イン]へぇ。

[ヌン]どうだい、お前もやってみるか?
[イン]いや、止めとく。走り出したら大変だ。
[ヌン]はははっ。

村の女の子が、お昼ご飯を持って来てくれました。二人は小川で手を洗い、草むらに腰掛け、田んぼを眺めながら竹の皮を広げます。水辺には水牛が寝そべり、小川では子供が小魚やタニシを捕っています。

[ヌン]のどかだなぁ。
[イン]あぁ。何時までも続くと良いな。

雨が降り出す頃になると、田に薄く水を張って籾(もみ)を播きます。この時も大方の村人が参加して一斉に播きます。村人との絆はどんどん強まって行きます

[ヌン]イン、ただ播けば良いってもんじゃないよ。一箇所に纏(まとま)らないよう均一に。
[イン]いやはや。お前に教えられるとは思わんかったよ。はははっ。

後は水を切らさないようにして、雑草を取り除きながら稲の成長を見守ります。稲が有る程度育ったらアヒルを放ちます。アヒルは雑草や水草を食べて成長するのです。

二人が村から連れてきたアヒルたちが、あぜ道を一列に並んで歩いています。一匹が田んぼに飛び込むと、他のアヒルも一斉に後に続きます。ひとしきり餌をとったらあぜ道で羽を休めます。そして身体が温まったらまた田に入って行きます。夜、アヒルたちは、あぜ道や草むらで一塊になって寝ていました。

[ヌン]よく考えてるなぁ。水牛が田を耕し草を食む。アヒルが雑草を食べて大きくなる。
[イン]全て、ご先祖様の知恵だよ。

ヌンは、和族の自然を愛し自然と共存する考え方に感心していました。

[ヌン]なぁ、イン。稲穂が実ると鳥が啄(つい)ばむ。何とかならんかなぁ。
[イン]あぁ。鳥は神の使いだからな。殺すわけにもいかん。

後は、稲の花が咲き、実をつけるのを待つだけです。終盤は水の流入を止めて田を乾燥させます。やがて稲穂は黄金色に輝き出し、また豊穣祭の季節がやってきます。二人には、すでに祭りの太鼓の音が遠くから聞こえているようです。

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