和族遥かなる旅路Ⅱ

タイ族編 第2話 - 豊穣祭

ヌンは、イ族のインと一緒にあぜ道を歩きながら、稲穂の実り具合をみて歩きます。二人は和族の村で初めて会った日から、すっかり意気投合して無二の親友になっていました。

[ヌン]この様子だと、もうすぐ刈り入れが出来そうだ。
[イン]あぁ、今年も豊作だ。豊穣祭が盛大になるぞ。和族の村で新しい穀物倉庫を作っているから見に行こうぜ。

田んぼから程近い村の入り口で、床上式の穀物倉庫を二棟作っていました。住居はまだ竪穴式でしたが、自然が恵んでくれた、大切な穀物は特別扱いでした。

[イン]今度の倉庫は床上式だぞ。
[ヌン]うん。壁も、竹や板張りで風通しが良さそうだ。

[イン]おい、見ろよ。床が張り出して鼠返しになっている。
[ヌン]入り口の階段も、鼠が上らない様に取り外し式だ。これなら交代で見張りに着かなくて済むぞ。
[イン]あぁ、全くだ。世の中どんどん便利になって行くなぁ。

二人は、革新的な倉庫に目を見張りました。

稲刈りは、早朝から村人総動員で行われました。当時はまだ鎌が無く、石包丁で稲穂だけを刈り取ります。男も女も手に手に石包丁を持ち、額に汗して稲穂を刈っています。どの顔からも笑みがこぼれます。誰からとも無く歌い始めました。男と女の掛け合いの歌です。男の問い掛けに、女たちが手を休め声を揃えて歌を返します。今度は男たちが歌を返します。村の大切な行事は、男女の出会いの場でもありました。

刈り取られた稲穂は、そのまま米俵に詰めて倉庫に運びます。倉庫の前では、ヌンが真剣な顔で米俵を数えながら中に積んでいます。

[ヌン]いち、に、さん、し、ご、えぇと・・・。
[イン]ろく!

周りの和族がくすくすと笑います。タイ族は、これまで数をあまり気にしなかったようですが、そんなヌンを和族もイ族も温かく見守ります。

[イン]農耕は先ず先ずだけど、数はまだまだだな。
[ヌン]ねぇ、イン・・・。両手の指で、いち、に、さん、・・・、じゅう。両足の指で、・・・、にじゅう。
その先はどうするの?
[イン]・・・。

豊穣祭の準備は着々と進んでいます。和族の豊穣祭には木の太鼓が欠かせませんが、太鼓は、10~20年に一度新しく作り替えなければなりません。森で太い木を切り倒し、2mほどの長さに切って乾燥させます。四隅に四角い穴を開け、その穴に縄を通し、前に二組後ろに二組、合計数十人で山から村へ引いて行きます。丸太の上には人が一人乗って、木の枝を振りながら右や左と号令をかけます。これがお神輿の起源なのでしょうか、村では女たちが出迎えます。

豊穣祭は年に一度、収穫が終わった8月末頃に行われました。収穫した全ての種類の穀物や果物を祭壇に供えて、太陽と祖先に一年間の豊穣を感謝し、来年の豊作を願うのです。これが農耕民族の年の終わりであり、新年の始まりでもありました。祭壇の準備が終わり村人全員が集まると、木の太鼓を打ち鳴らし、男女が髪を振り乱して踊り、太陽神と祖先を呼び出します。

インとヌンも必死で太鼓を叩きました。
豊穣祭もまた、男女の出会いの場です。いえ、豊穣祭の一部と言った方が良いのかも知れません。男女が交わり、子供が生まれることは、豊穣祭の趣旨そのものなのです。

この頃のお米は、まだ少し赤味がかっていました。お祝いの意味も有って、大人も子供も同じ量の新米を竹の皮に盛って平等に分配します。新米を食べ餅を突き、お祭りは三日三晩続きました。

Google Sponsored

コメント

このページに関する、ご感想やご質問をお寄せください。
お名前と都道府県名は、正確にお書きください。 - 泰山 -

お名前: *必須
都道府県: *必須
コメント: *必須

まだコメントは有りません。