和族遥かなる旅路

東南アジア編 第1話 - 象の道

インド大陸は荒れ果てていました。しかし、海岸沿いを廻る冒険者達には関係ありません。三人は快適な旅を続けていました。ベンガル虎の生息するインダス川の湿地帯も、行く手を遮(さまたげ)るアラカン山脈も、ソンの操(あやつ)る丸太舟で難なく乗り越えました。

[イー]森だ。森がずっと続いている。
[ジー]すげぇ。こんなの初めて見た。
[ソン]あぁ。俺もだ。

そこは、ベンガル湾とアンダマン海を望む、世界有数の年間降水量を誇るビルマの沿岸でした。

[イー]あそこに上陸しよう。
[ソン]うん。でも、あまり中には入らん方がいいぞ。

海岸沿いを漁猟採取しながら南下します。一番喜んでいるのはイーでした。海岸沿いでも、思う存分狩猟ができるようになったからです。食事に森の獣が登場します。

[ソン]へぇ。肉って美味いもんだな。これから俺も連れてってくれ。
[イー]いいよ。

南下するに従って、点々と村がありました。やはりソンと同系の海洋民族のようです。ソンが聞いてきた話をまとめると、彼らの本隊は、すでにオーストラリアに渡ったようです。
次の日、イーはソンと二人で狩りに出掛けました。ソンの腕前は、すでにイーを凌ぐほどに上達しています。

[ソン]おい。あそこに象がいる。行くぞ!
[イー]待て、ソン。大き過ぎるよ。

イーの声が聞こえなかったのか、ソンは象に向かって走り出しました。イーも後を追いますが、残念ながら、二人は山の上で象を見失ってしまいます。その時、眼下に森と広大な砂浜が見えました。ずっと先には海もありそうです。

[ソン]おい。あそこに出れば、また東へ行けるぞ。
[イー]うん。行けるな。

翌朝、三人は再び森に分け入り、山頂を目指します。

[ソン]これって象の道だよ。ほら、草や木がなぎ倒されている。
[イー]時々、樹皮の剥がれた木がある。象が身体をこすり付けたんだな。
[ジー]へぇ、二人ともよく分かるねぇ。これを辿(たど)って行けば、象がいるってことだ。

[ソン]棘々(とげとげ)の皮が、いっぱい散らかってるぞ。象が食べたのかな?
[イー]あの木だ、実が生っている。
[ジー]くせぇ。

[ソン]そうかぁ? 美味いぞう。
[イー]俺も美味い。
[ジー]二人とも可笑しいんじゃないの?

二人が食べたのは、果物の王様ドリアンです。どうもジーには合わなかった様ですが。
ドリアンはマレー半島が原産で、これまで種の運び手は象だけだったのですが、そこに人類が加わりました。

三人は、昨日の山頂に出ました。森の先には砂浜が拡がっています。こちらの斜面にも、象の道らしき窪みが続いていました。此処はマレー半島の付け根辺りです。期せずして、三人は一気にマレー半島を横断したのでした。

Google Sponsored

コメント

このページに関する、ご感想やご質問をお寄せください。
お名前と都道府県名は、正確にお書きください。 - 泰山 -

お名前: *必須
都道府県: *必須
コメント: *必須

まだコメントは有りません。