和族遥かなる旅路
インド大陸編 第1話 - 冒険者達
沈痛な思いで首長の家に別れを告げた兄弟は、海の村の入り口に差し掛かっていました。
[イー]サンお兄さんとソンには会わないで行こう。
[ジー]うん。二人とも、きっと分かってくれる。
兄弟が村を通り過ぎ、断崖絶壁沿いの細い砂浜に入ろうとした時、行く手を塞ぐように一人の若者が寝そべっていました。
[ソン]俺も行く。この先は、航海術を知らないお前たちには無理だ。
二人は、突然のソンの申し出に、顔を見合わせてにこりと笑いました。
[イー]・・・まぁ、そこまで言われたら、断る理由はないわな。
手痛いイーのしっぺ返しに、ソンも苦笑いです。
アラビアの断崖絶壁に、今度は三人の笑い声が響き渡りました。
実際、海洋民族のソンが加わったことは、二人の兄弟にとって、何にも増して心強いものでした。
三人の冒険者たちは、来る時と同じように、細い砂浜を歩き磯を乗り越えて進みます。
時には、丸木舟で海を迂回し、断崖絶壁をも克服します。
行く手に再び大河が現れました。インダス川です。
ソンは、村人に近づいて何やら話しています。
[イー]見ろよジー。言葉が通じているぞ。
[ジー]うん。ソンと同じ民族みたいだね。男たちの顔が厳(いか)ついもの。
彼等は、先行していた海洋民族でした。その後も、行く先々で同系の民族と出会うことになります。
兄弟は、ソンが同行してくれた事に、改めて感謝しました。
[ソン]何んか、話によると、この先もずっと荒野が続いているらしい。
当時のインド大陸は、今から74,000年前にインドネシアのスマトラ島で起きた、世界最大の噴火による被害が癒えず、まだそのまま残っていました。人々が住めるのは、河川流域か海岸沿いの限られた地域だけでした。
[イー]ここらもいつかきっと、小麦たちの子孫がやって来て開拓してくれるだろう。僕らは先へ進もう。
[ジー]そうだね・・・。
ジーは、小麦たちの話が出て来て嬉しくなりました。イーもソンも、ジーに気を使って、ずっとその事に触れないできたからです。
三人は、また海岸沿いに東へ東へと進みます。
[イー]暑いなぁ。此処はアフリカと同じだよ。
[ソン]何か、二人とも益々真っ黒けになっちまったねぇ・・・。
二人を世界一黒い民族に認定します!
インド洋に大きな笑い声が拡がりました。
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