和族遥かなる旅路

アラビア編 第9話 - 別れの石臼

ソンが作っていた丸木舟は、二人のアイデアでわずか一週間で完成しました。
従来の四分の一の日数です。ジーは、完成した船に、更に松脂(まつやに)を塗って防水加工をしました。

[ソン]自分の船でもないのに、何故そこまでする。
[ジー]友達だから。
[ソン]ふうん。おまえ変わってるな。
[ジー]そうかなぁ。イー兄ちゃんも同じだよ。
[ソン]・・・。

イーは、マリアと山の村へ行ったきり、まだ帰ってきません。
ジーは、一旦首長の家に戻って、そこで兄を待つ事にしました。

[ジー]サンお兄さん、お世話になりました。
[サン]何の何の。世話になったのは、こっちの方だ。イーが帰って来たら、よろしく言ってくれ。
[ジー]はい。
[ソン]・・・。

家に戻ったジーは、石を切り出してきて、こつこつと削ります。

[小麦]ジー、毎日毎日何してるのよう。
[ジー]内緒。
[小麦]い~だ。

そうこうする内に、イーも帰って来ました。
山の村に行って弓と矢を作り、村の青年に狩猟の仕方を、手取り足取り教えたそうです。
マリアも、さぞや喜んだことでしょう。

[ジー]お兄ちゃん、マリアにちゃんと言ったの?
[イー]面と向かっちゃうと、言えないよ。

どうも、イーは、「好き」の一言が言えなかったようです。
マリアは、それを待っていたのに違いないのですが。
いつの時代も、男と女には、すれ違いがあるようです。

[イー]ジー。また東へ行こうと思う。
[ジー]うん。わかってる。
ちょっと待ってて、お父さんとお母さんと、・・・小麦に挨拶してくる。
[イー]・・・。

ジーは、入り口の前に立つと、家の中に向かって叫んだ。

[ジー]小麦・・・。聴こえるか。顔を見ると辛くなるから、そこで聞いてくれ。
おれと兄さんは、かあさんとの約束があるから、また東に向かう。この先は、また断崖絶壁で、身重のお前を連れて行く事は出来ない。生まれてくる子供は、きっと新しい時代を切り開く農耕民族の子供だ。子供が大きくなったら、おれたちの後を追いかけてきてくれ。通る道は違っても、道は繋がっている。必ずまた会える。

[小麦]・・・。
[母親]小麦よ・・・。男は出て行くものなのです。女はここを守るものなのです。
[首長]・・・。

[ジー]小麦・・・。麦を引く石臼を作った。穴に入れてぐるぐる回すだけで粉になる。おれだと思って、大切に使ってくれ。

[小麦]わかった。必ず後から行く。

後日、マリアは、全ての白人の母となります。一部は暖かい地中海沿いに、また一部はイーに教えてもらった弓矢を携えて、白い山脈に挑戦します。
小麦は二卵性双生児の兄妹、ユーとヤーを生みます。古代メソポタミア文明、古代インダス文明の基礎を作ったドラヴィダ人の始祖です。
そして小麦は、後日、インド大陸からチベットを超え、ジーの後を追いかけるのです。

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