和族遥かなる旅路

アラビア編 第3話 - 小麦

[ジー」お兄ちゃん。ここに来る途中に、草を摘んでいる女の子が居たよね。ちょっと行ってみようか?
[イー」うん、居たね。行ってみよう。

二人とも、気にはなっていたのですが、その時は声を掛ける勇気がありませんでした。
葦(あし)の生えた湿地を戻りながら、何と声を掛けようか思案中です。
その女の子は、来た時と同じ場所で、まだ草を摘んでいました。

[ジー」ね、ここで何してるの?

はっとして、こちらに向けた横顔が、夕日に照らされて何とも可愛いく思われました。

[小麦」はい、麦の穂を摘んでいます。
[ジー」麦?
[小麦」食べた事ないですか? うちに来ればご馳走しますよ。

二人は誘われるままに、少女の後から付いて行った。
家は、今まで見たこともない石造りだった。部屋も沢山ある。

[小麦」おとうさん、お客様を連れてきたよ。
[首長」お帰り。おやおや、また可愛らしいお客様だね。
わしらは、赤黒いけど、あんた達は真っ黒だねぇ。ははは。

これが普通だと思っていたから、今まで肌の色なんて考えた事もなかった。
そういえば、海岸の村人達も、黒いというよりは赤黒かったな。
おじさんは、厳つい顔で怖いけど、優しかった。

母親と小麦が入って来て、焼きたてのナンを並べ、食べ方を教えてくれた。
初めて食べる塩味の利いたナンに舌鼓を打ちながら、話を聞く。
麦は、ここらには少ないけど、山の方の涼しいところには、沢山生えているそうだ。

イーとジーは、今までの事を全部話した。草原のかあさんの事、海辺の村、筏で海峡を渡った事、断崖沿いにやって来た事。
小麦は、目をキラキラさせて聞いている。

[首長」向うは大変なんだねぇ。気が済むまでうちに居ると良い。
うちも丁度、息子たちがみんな出て行って、心にポカンと穴が開いたようだったんだ。
[小麦」おとうさん、ありがとう!

その夜、二人は石の上に藁(わら)を敷いたベッドで寝た。

[ジー」小麦ちゃん、可愛いねぇ。
[イー」うん。

初めはふわふわで眠れなかったが、いつしか、疲れから深い眠りに落ちて行った。

Google Sponsored

コメント

このページに関する、ご感想やご質問をお寄せください。
お名前と都道府県名は、正確にお書きください。 - 泰山 -

お名前: *必須
都道府県: *必須
コメント: *必須

まだコメントは有りません。