和族遥かなる旅路

アフリカ編 第3話 - 出アフリカ

二人は、岸に腰掛けて、潮目が変わるのをじっと待っていた。
村民も、二人が何をしているのかは解らないけど、じっと待っていた。

[ジー]お兄ちゃん。今、海に向かって水が流れているよね。
あの流れが止まりかけたら出よう。
早過ぎると海に流されちゃうし、遅いと海峡の奥深くへ運ばれちゃう。
真ん中辺りまで筏が進んだ時に、海の水が止まってくれるのがちょうどいい。
[イー]解った。もう少しだな。
[ジー]何時でも出られるように、後は筏に乗って待とう。
[イー]解った。

[イー]ジー、見ろ。みんなが手を振ってくれてる。
[ジー]うん・・・。お兄ちゃん、やっぱり涙が出てくる。
[イー]ジー、泣くな。お前が泣けば、みんなが泣いちまう。
[ジー]うん・・・。

[イー]そろそろ、いいんじゃないか?
[ジー]うん。行こう。

イーは、棒で思い切り岸を押した。村人も海に入って筏を押す。
動き出した。
二人には、後ろを見る余裕はなかった。ただ必死で漕いだ。海が止まる前に、真ん中付近へ出なければ・・・。

[イー]おい、ジー。少し海に流されているんじゃないか?
[ジー]いや、丁度いい。真ん中まで行けば、今度は逆に流れる。
[イー]なるほど、お前、頭いいなぁ。
[ジー]あっ、お兄ちゃん、初めて褒めてくれた。

海の中から二人の笑い声が聞こえた。
村人は、まだ手を振っている。少し余裕が出た二人もそれに答える。

しかし、二人が予期していないことが起こった。
海が止まって水が逆に流れ始めても、筏は一向に岸へ向かわない。
むしろ、陸から離れ、どんどん沖に向かっているのだ。

[イー]おかしいぞ、ジー。
[ジー]風だ・・・。陸からの風が、筏を沖に押し出しているんだ。

[イー]どうする、ジー。
[ジー]分らない・・・。
あぁ、かあさん。

その時、筏が止まり、再び岸に向かって動き出した。
そうです。満ち潮の勢いが増して、風の力を上回ったのでした。
こうして二人は、くたくたになりながらも、何とか対岸に辿りつきました。
出アフリカです。

[ジー]ごめん、兄ちゃん。
[イー]何言ってんだ。ちゃんとお前の計算どおりに、満ち潮で岸に着いたじゃないか。
ちょっと慌(あわ)てたけどな。

二人の笑い声が、アラビア半島の荒々しい岸壁にこだましました。

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