和族遥かなる旅路

アフリカ編 第2話 - 海辺の村

二人が海辺にたどり着いたのは夕暮れだった。

[ジー]お兄ちゃん、向うに人がいるよ。僕らと同じような人が。
[イー]うん。・・・行ってみよう。

[イー]おばさん、こんにちは。
[村人]はい、こんにちは。
あれ?、あんたたち見かけない顔だけど、何処から来たの?
[イー]あっちから。

イーは、今まさに日が沈もうとしている、西の草原を指差した。

[村人]そう・・・、二人でねぇ・・・、大変だったねぇ。
今日はもうすぐ暗くなるから、うちに泊まりな。お腹も空いてるでしょう。
[イー]・・・ありがとう、おばさん。

その家は、少し小高い崖の窪みに寄り添うように建っていた。
椰子の葉っぱを何枚も何枚も重ねて作った立派な家で、草原の木の枝を乗せただけの吹き曝(さら)しの家とはだいぶ違った。
よく見ると、他にも幾つか同じような家がある。

[村人]さあさあ、おはいり。今ご飯作るからね。

中は思ったよりも広く、真ん中に火が燃えていて、お父さんと小さな女の子が二人ちょこんと座っていた。
物珍しそうにこちらを見ているが、やさしそうな顔だ。
自分達と同じように見えたが、言葉も少し違うし、身体つきも何処かしら違う。
背格好は同じだけど、もっと身体が細く、子顔で可愛らしくて、控えめな割には意志が強くて俊敏なようだ。それに凄く優しい顔をしている。
(かあさんが言っていた、イブ族かな。そういえば、かあさんに何処となく似ている)

二人は出てきた食べ物に驚いた。見た事もない魚や貝がバナナの葉っぱの上に山盛りなのだ。
むしゃぶりついて食べる二人を、皆でニコニコと眺めている。
夜は、みんなで輪になって一緒に寝た。かあさんと楽しかった日々の夢を見ながら。

[イー]ジー、起きろ。もう朝だぞ。

よほど疲れていたのだろう。ぐっすりと寝込んでしまったようで、家の中には、二人以外に誰も居なかった。
外に出ると太陽がまぶしい。
昨夜は良く分からなかったが、眼下には白い砂浜と青い海が何処までも広がっていて、言葉が出ないほど綺麗だ。
おばさんや子供たちが、砂浜で何かやっている。おとうさんは、海の中で魚を獲っているようだ。

[イー]おい、ジー。行ってみよう。

二人は砂浜を駆け降りた。

[子供]おにいちゃん、おはよう。
[イー]おはよう、みんな。おはよう、おばさん!
[村人]やぁ、もう起きたのかね。ゆっくり寝てればいいのに。
[イー]何をしてるんですか?
[村人]貝や海苔を採っているんだよ。たまには蛸もいるよ。
[イー]え?

二人にとっては、見た事も聞いた事も無い物ばかりだった。
すごいなぁ。だから、かあさん、東へ行け、海へ行けと言ったんだ。

[イー]おばさん!、僕たちも手伝う。
[村人]おやおや、助かるねぇ。
[イー]やるぞジー。
[ジー]うん。

二人は楽しかった。嬉しかった。
ここなら、ライオンも来ないし、食べ物にも困らない。大きくなったらきっと魚も自分達で獲れる。
おばさんも、今日はいつもの二倍も採れたと大喜び。早速、付近の家におすそ分けしていた。

家の近くには、大きな穴が掘ってあり、貝殻が一杯捨ててある。
しばらく家族同様に暮らしていた、ある日。
その近くで、お父さんが、キリキリと一生懸命貝殻に穴を開けていた。
娘の首飾りを作っているようだ。

[ジー]おとうさん、僕にもやらせて!
[村人]おやおや、出来るのか?、難しいぞ。
[ジー]うん。ちょっとキリを改良してみた。ほら、綺麗に穴が開くでしょう。
[村人]あれあれ、ジーは器用だねぇ。驚いた。

すっかり周囲の人と仲良くなった兄弟だが、イーはここ数日何か思いつめている。

[ジー]お兄ちゃん、どうかしたの?
[イー]うん・・・、ここに余り長く居ると、また、かあさんの時みたいに別れが辛くなってしまう。
海辺の生活にも慣れたし、自信も付いてきたから、そろそろまた東へ向かおうと思う。
ただね、東には大きな海峡が有って渡れそうもない。
[ジー]うん・・・、僕ね、いつも海峡のそばに座って見ていたんだけど、引き潮の後に海が止まって海峡が狭くなるんだよね。その時だったら、簡単な筏(いかだ)でも、向こう岸に渡れるかもしれない。
[イー]・・・やるか。
[ジー]うん。

そうと決まると、二人は早速筏を作り始めた。
椰子の木を切り出し、シュロの皮を剥いで丸太を結ぶ。
おいおい、またあの二人、変な事を始めたぞ。今度は何を作るつもりだ。
続々と集まってくる村人たちがまるで目に入らぬかのように、もくもくと作り続ける二人。
たちまち、一艘の筏を作り上げてしまった。

[イー]皆さん、お世話になりました。
僕たちはこれから海を渡って東へ行きます。皆さんの事は絶対に忘れません。
[村人]そうか。行くか。また寂しくなるなぁ。わしらもお前たちの事は忘れないよ。気をつけてな。
[村人]これ、持って行きな。干した魚と蛸だ。
[イー]おばさん・・・、本当に長い間有難う。
[子供]おにいちゃん、気をつけてね。
[ジー]うん、みんなも元気でな。

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